那須川がイメージする勝利の方程式 2.12「KNOCK OUT FIRST IMPACT」

勝負のポイントは反応が良すぎるタイ人に対するフェイント!? 那須川がイメージする勝利の方程式 「久々にちょっとワクワクするというか。負けるかもといわれる試合の方が楽しみじゃないですか。逆にそれがモチベーションになる」 目前に控えたスアキム・シットソートーテーウとの大一番について訊くと、那須川天心ははにかんだ笑顔とともに話を切り出した。 「さすがに試合が決まった時にはヤバいかなという気持ちもあったけど、いまはもうやるしかないという感じ。スアキムに勝ったら、もう誰もが認めるんじゃないですかね」 スアキムはタイ国プロムエタイ協会が認定するスーパーフェザー級王者。その一方でムエタイ二大殿堂のひとつであるルンピニースタジアムのランキングでは同級8位にランクインしている。肩書だけではわかりにくいという方には、こんな情報を提供しよう。今年1月9日にはルンピニーの同級王者ナウポンとノンタイトル戦で激突し、4Rに左ヒジをアゴにクリーンヒットさせてTKO勝ちを収めているというのだ。 権威だけを見るとプロムエタイ協会王座はルンピニーのそれより格下に見られることが多いが、少なくともこの階級ではプロムエタイ王者の方が強いということになる。 特筆すべきはスアキムはこの階級では背が高く、172㎝もあるということだ。175㎝あるという説もあるが、那須川より10㎝前後背が高いということは疑いようもない。キックボクシングやムエタイでは背が高いだけで大きなアドバンテージとなる。リーチも長かったら、アドバンテージの割合はさらに高まる。上から覆い被さるようにして首相撲にいったり、中間距離からヒジを繰り出してもヒットさせることができるということだ。 知っての通り、那須川はキックボクサーとしてプロデビュー以来無敗の快進撃を続けている。一昨年12月29日から挑戦しているMMAでもいまだ負けを知らない。そんな那須川にも「さすがに危ない」といわれた試合があった。ひとつはKNOCKOUT旗揚げ戦で組まれたワンチャローン戦、もうひとつはMMAデビュー戦だ。 中でもワンチャローン戦が決まった時には「絶体絶命」という声も少なくなかった。それはそうだろう。当時のワンチャローンはルンピニースタジアム認定スーパーフライ級王者。いくら那須川より階級が下の選手といっても、「ヒジヒザありのルールだったらさすがの那須川のひとたまりもない」という意見が多かったのだ。 しかし、結果は1Rに那須川がバックスピンキックで電光石火のKO勝ち。下馬評を覆すとともに、ヒジ・ヒザありの純粋なキックボクシングルールでも強いことを証明し、KNOCKOUTのエースに躍り出た。 スアキムはもともと那須川と同じスーパーバンタム級の選手だが、強すぎて訂正体重だとマッチメークに支障をきたすようになり、2階級上で闘うようになった。ムエタイのランキングは目安にすぎない(評価の対象となるのはファイトマネーが多いか少ないかだ)。那須川の父でトレーナーも務める弘幸さんはスアキムが踏み込むことなく打てるヒジ打ちを警戒するという。 那須川もその意見には大きく頷く。 「(対照的に)僕は踏み込んでナンボ。入っていかないと勝てない。そのヒジをどう避けて、どう自分の攻撃を当てていくか。ちょっと厄介ですね」 驚いたことに那須川はこれまでに一度も思い切りヒジをもらったことはないという。 「子供の時にちょっともらったことはあったけど、ガツーンというのはない。ヒジで斬られたこともないですね」 当然、スアキムのヒジ対策は練っている。 「ヒジがメインの選手だと思うので。ヒジは絶対もらったらいけない」 もちろん首相撲を仕掛けられることも想定内だ。 「組んでしまうと不利になる部分もあると思うので、なるべく組まないで自分の距離で闘おうと思います。闘うイメージは、ほぼほぼ固まってきている」 タイの関係者に話を訊くと、「今回の試合に那須川が勝てば、彼は新たな次元に足を踏み入れることになる」という話を耳にした。それだけスアキムの強さが認められているということか。那須川は相手より上回っている部分で勝負しようとしている。 「出入りのスピードだったり、相手の知らないテクニックだったり、アッと驚くようなことをしたい」 勝負のキーポイントはフェイントだ。具体的な話を訊くと、那須川は深い話を始めた。 「タイ人は結構フェイントに引っかかる。(なぜなら)反応がメチャクチャいいじゃないですか」 ん?反応がいいと逆に引っかからないのでは? 「いろいろなタイプがいるけど、タイ人はテクニシャンであればあるほど、僕のフェイントにはハマると思う。ワンチャローンもそうだった。フェイントをいっぱいかけて、(ボディ狙いの攻撃など)当てて当てて最後にアゴにバックスピンを決めた。そういうのが得意なんですよ。今回もそうなってほしい。なるべく速いうちに」 2ラウンドまでは様子を見て、3~4ラウンドで勝負というムエタイの常識は那須川には通用しない。常識を超えたところに700年の歴史を持つムエタイですら注目せざるをえない神童の強さが見え隠れしている。 「ムエタイだからといって、僕は特別な意識を持っているわけではない。(TARGETやTEAMTEPPENで)自分たちがやっていることが正しいと思うし」 今回も我々の想像を遥かに超えたフィニッシュが待ち受けているのか。 (取材・構成 布施鋼治)   布施鋼治 fuse koji 1963年7月25日、札幌市出身。得意分野は格闘技。中でもアマチュアレスリング、ムエタイ(キックボクシング)、MMAへの造詣が深い。取材対象に対してはヒット・アンド・アウェイを繰り返す手法で、学生時代から執筆活動を続けている。Numberでは’90年代半ばからSCORE CARDを連載中。2008年7月に上梓した「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨」(双葉社)「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島社)などがある。   KNOCK OUT FIRST IMPACT ◆日 時  2018年2月12日(月・祝)  開場16:00  開始17:00 ◆会 場  大田区総合体育館 ◆アクセス 〒144-0031 東京都大田区東蒲田1−11−1 TEL:03-5480-6688 京急線、梅屋敷駅徒歩5分 京急蒲田駅徒歩7分 JR線・東急線、蒲田駅徒歩15分 ◆主 催  株式会社キックスロード ◆協 力  株式会社RIKIX 株式会社ブシロード ◆入場料金(消費税込み) アリーナS :25,000円(当日25,500円) アリーナA:15,000円(当日15,500円) … Continue reading 那須川がイメージする勝利の方程式 2.12「KNOCK OUT FIRST IMPACT」