KNOCK OUTの解説者を務める、元ラジャダムナン・スタジアム認定スーパーライト級王者、石井宏樹さんが、「KNOCK OUT vol.1」の全試合を分析!第1回は、元ボクシング世界王者を”神童”がボディーへのパンチでKOするという、衝撃のKO決着となった、那須川天心vsアムナット・ルエンロンを振り返り!
1R
アムナットは蹴りを主体に戦っていた
–ボクシング時代のアムナット選手(以下敬称略)は、両足を前後に大きく広げて構えることで知られていましたが、今回はかなり足を狭く構えていました。これはボクシングとキックボクシングの競技の違いなんでしょうか?
石井「蹴りがあるキックボクシングではスタンスが広いと相手の蹴りに対して防御が遅れてしまうのと前蹴りを出しやすいようにする為の構
–アムナットは那須川のヒザに向けて前蹴りを放っていきます。これはどういった効果があるのでしょう?
石井「これは、ダメージを与える攻撃ではなくパンチを貰わない距離で戦えるように出す前蹴りです。」
–那須川のローからの左のパンチがアムナットを捉えます。アムナットは下がり続け、得意の組み付きを試みるも、那須川を捉えられません。これは序盤からスピード差があったことが要因なんでしょうか?
石井「那須川は、パンチだけで終わらずローキックを上手に繋げていますし組まれて
2R
那須川は慎重に戦っていた
–アムナットはこのラウンドも前蹴り、ミドルキックと蹴りが主体です。時折放つパンチは那須川を捉えることが出来ません。アムナットはこの時どういった作戦だったんでしょう?
石井「元ボクシング世界王者のアムナットでもパンチの打ち合いは避けていたように思います。時折パンチを打っていますが届いていませんね。序盤は、蹴りの距離で戦う作戦だったように思います。」
–那須川は速いローキックを蹴り込んでいきますが、アムナットの懐に入っての攻撃は出来ていませんでした。アムナットの懐に入れない要因は?
石井「那須川は、1R同様ラウンド始まってから様子を見ながら動いています。やはり、那須川もアムナットのパンチを警戒していたのでしょう。懐に入れないと言うよりも安易に入って行かなかったと言った方が正しいかもしれませんね。」
–ラウンド終了間際には、那須川が両腕を前に突き出す「トリケラトプス拳」を披露します。リング上で対戦相手にアピールに近いポーズをされると、選手としては心乱されるところはあるんでしょうか?
石井「アムナットは、『何をしているんだ!?』と言う様子でしたね(笑)。あれだけのキャリアがある選手は、相手にどんなアピールをされても混乱する事は無いですよ。」
3R
那須川はボディーでアムナットのスタミナを削る
–アムナットは組み際にヒジを狙いにいきます。そこからの組みの崩しはさすがムエタイ王者という感じでしたが、アムナットのムエタイ技術は錆付いてはいなかった?
石井「このラウンドから肘を出し始めて来ていますね。肘にしても首相撲にしても、これまでのキャリアがあれば何年経っても体は覚えてるものです。」
–那須川はこのラウンドもボディーブローを狙っていきます。序盤からボディーへのパンチ は多かったように感じますが、この時点ではアムナットのボディーのダメージの具合は?また、なぜボディーブローが有効だったんでしょう?
石井「那須川は、前半からボディーを狙ってスタミナを奪う作戦だったのだと思います。アムナットは、パンチをとても警戒してガードを高く上げていますのでスピードのある那須川のボディーが入りやすくなっています。アムナットは那須川のボディーで少しづつスタミナを奪われて来ていますね。」
4R
フィニッシュは蹴りのフェイントから
–アムナットはパンチ中心のスタイルに変更して距離を詰めてきます。戦いかたもボクシングのようになっていましたが。
石井「4Rに入りアムナットは、那須川のローキックを嫌い近い距離(パンチの距離)で戦う作戦に変えてきましたね。」
–ロープ際で前に出てきたアムナットのボディーに、那須川のヒザ蹴りがヒット。アムナットのガードが下がったように見えますが、このヒザがKO決着を呼び込んだんでしょうか?
石井「那須川の膝のタイミングは素晴らしかったですね。アムナットは、この膝でそこまで大きなダメージを負ってないように見えますがこの時点であきらかにお腹に対しての攻撃を嫌がっています。」
-最後は下がるアムナットを追いかけての左ボディーで那須川がKO勝利。最後に放った高速のコンビネーションも華麗でした。
石井「那須川選手が左の蹴りを出すフェイントからのボディーですね。アムナットは、お腹に意識が行きながらもパンチと蹴りを防ごうとしてガードを高く上げ、足は防御の体制になっている所に見事に那須川選手の左右のボディーが炸裂しました。」
勝者 那須川天心 4R KO
那須川は常に相手をどう倒すか考えて動いている
–那須川が元ボクシング世界王者を最後はパンチで仕留めるという衝撃決着となりました。この試合で那須川の一番優れていた点は?
石井「那須川は前半からボディー狙いの中、ボディーだけではなくパンチ、ローキックと上下散らしてアムナットの意識を飛ばしています。普段の練習から相手をどう倒すか考えて動いてる証拠ですね。」
–逆に、アムナットのパンチは那須川を最後まで捉えることはありませんでした。アムナットの敗因は?
石井「アムナットは、ボクシングの動きに慣れ過ぎて前半から見過ぎてしまいスピードのある那須川のパンチから蹴りに対しての対応が出来ていませんでした。那須川がアムナットの動きに慣れてくる前にパンチと肘(近い距離で戦う)で行った方が良かったのでは。」
–現役ムエタイ王者からKO勝利。MMAで1本勝利。元ボクシング世界王者をパンチでKOと、予想を上回る結果を出し続ける那須川。石井さんは今後の那須川に、どのような試合を期待していますか?
石井「ことごとく相手のお株を奪ってきた那須川。次は肘を振り回してくるムエタイ強豪選手相手に肘で倒す所も見てみたいのと、ワンチャローンとの再戦も個人的には見たいですね。」
石井宏樹
1979年生まれ。東京都目黒区出身。、元ラジャダムナン・スーパーライト級王者。元新日本キックライト級王者。ムエタイの殿堂ラジャダムナン・スタジアムのベルトを獲得。それまでに同タイトルを獲得した選手が誰一人成し遂げることが出来なかったタイトル防衛を外国人として初めて成功した。引退後は小野寺力が代表を務めるRIKIXにてトレーナーを務め後身の指導に励む。
Twitter https://twitter.com/hiroki_ishii141
KNOCK OUT vol.2
日時 2017年4月1日(土)
開場16:00 開始17:00
会場 大田区総合体育館
チケットぴあ https://goo.gl/u2IHC0
ローソンチケット https://goo.gl/pDV0qLイベント概要
https://knockout.co.jp/event/knock-out-vol-2/